体脂肪を減らしてダイエットするためには、摂取カロリーよりも消費カロリーを多くすることが基本です。
カロリー消費のための運動としてダンスを取り入れた場合、果たして十分なダイエット効果を期待することはできるのでしょうか。またその他の一般的な運動と比較して、ダイエットに適したスポーツと言えるのでしょうか。
一般的な運動の消費カロリー
運動には「有酸素運動」と「無酸素運動」の2種類があるということは、なんとなく聞いたことがある方が多いかもしれません。「有酸素運動」とは、筋肉を動かすときのエネルギーとして酸素を使う運動のことです。運動を開始するとまずは血液中の脂肪が活用されるのですが、20分ほど続けると血中の脂肪が消費しつくされ、体に蓄積された体脂肪の分解が始まるという仕組みです。
つまり、諸説ありますが20分以上の継続でダイエット効果が期待できるのがこの「有酸素運動」です。代表的な有酸素運動の1時間あたり消費カロリーは以下の通りです。
・水泳(クロール):435kcal
・サイクリング:420kcal
・ジョギング:367kcal
・ウォーキング:236kcal
・ヨガ(パワーヨガ):210kcal
・踏み台昇降:196kcal
一方「無酸素運動」とは、筋肉を動かすためのエネルギーを、酸素を使わずに作り出す運動です。短時間に大きな力を出す強度の強い運動がこれにあたります。無酸素運動は筋肉を鍛えて増やす運動なので、基礎代謝を上げることができ痩せやすく太りにくい体を作ります。代表的な無酸素運動である筋トレの1時間あたり消費カロリーは、種目ごとに以下の通りです。
・スクワット:262kcal
・腕立て伏せ:200kcal
・腹筋運動:200kcal
ただし、持てる力を出し切る筋トレを1時間同じペースで行うことは実際には困難であり、カロリー消費を目的とする運動としては有酸素運動の方が現実的と言えるでしょう。筋肉が増えれば増えるほど有酸素運動をする際の消費カロリーは増えるため、うまく有酸素運動に無酸素運動を加えることが、効率の良い理想的なダイエットの進め方となります。
ダンスの消費カロリー
さて、全身を使い動き続けるダンスは上記2種類のうち「有酸素運動」に区分されます(一部のジャンプや体幹を意識した動きは無酸素運動の要素もあります)。ダンスの種類ごとの消費カロリーは以下の通りです。
【バレエ系】
・クラシックバレエ、ジャズダンス、モダンダンス:262kcal
【ストリート系】
・ヒップホップ、ブレイクダンス、ロックダンス:262kcal
【ラテン系】
・サンバ:158kcal
・サルサ:236kcal
【社交系】
・ワルツ、タンゴ:158kcal
【その他】
・フラダンス、ベリーダンス:236kcal
消費カロリーだけを見ると、「ダイエットするなら水泳やサイクリングの方がいいのかな」と思われた方も多いかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?ダイエットにダンスを取り入れるメリットは、運動時の消費カロリーにとどまらないように思われました。
ダイエットにダンスを取り入れるメリット
音楽に合わせて楽しみながら継続できる
ジョギング1時間とダンス1時間、どちらの方が継続しやすいでしょうか。もちろん走ることが好きだという方もいると思いますが、私個人的には圧倒的にダンスの方が苦ではないと感じます。「ダイエットが必要だ」と感じる体重でいきなり1時間走るのは足にも負担がかかりそうですし、安全に気持ちよく続けられるイメージが湧きづらいと感じてしまいました。その点ダンスは好きな曲やなじみのある曲からゆるく始めることもでき、ハードルが低いのではないでしょうか。続けるうちに「もっとうまくなりたい!」という欲も湧きそうで、ダイエットの成果が出るまで継続できる可能性を感じました。
体幹やインナーマッスルが鍛えられる
この「うまくなりたい」「かっこよく踊りたい」という気持ちが芽生えると、さらにダイエット効果が高まると考えます。というのも、ダンスは美しく見えるように体の使い方を工夫する中で、体幹やインナーマッスルを鍛えることができる運動だからです。前述したとおり、踊り方によっては無酸素運動(筋トレ)の要素がダンスにも含まれるというわけです。取り組んでいる運動がダンスだけなのにも関わらず、継続して練習することで一部の筋肉が鍛えられ、さらに消費カロリーが高まることでダイエットの成果が出やすくなるというのは、かなりお得に感じられます。
姿勢が良くなる
体幹が鍛えられたり、見栄えの美しさを意識する中で、姿勢が良くなる効果があるのもダンスの特徴です。実は姿勢を良くすることには血行を良くして代謝を上げる効果があり、巷には「姿勢を正す」ということ自体がダイエットの一つのメソッドとして紹介されている記事もあるほどです。姿勢が良くなることで結果的にダンスをしていない平常時の消費カロリーまでアップするというのですから、大変嬉しい影響であると言えます。血行が良くなることで肩こりが解消される、体重とは関係なく見た目が美しくなるなど、体にとっては良いことずくめですね。
ストレッチの習慣がつく
ダンスに継続して取り組む中で、体の柔軟性を高めるため、お風呂上りや練習の前後にストレッチを取り入れる機会も多くなると思われます。ストレッチにより体の可動域を拡げることは、運動時の消費カロリーを高めることに繋がります。また、血行を促進することで基礎代謝を上げる効果も期待できるため、ストレッチの頻度が増えることはやはりダイエットにおいてプラスの影響があると考えられます。
このように、ダンスの消費カロリーそのものは水泳などの強度が強いスポーツには及ばないものの、中長期的に考えればダンスは継続的にカロリーを消費し効率よく脂肪を燃焼させる運動であると言えそうです。
体脂肪を3kg落とす場合
1㎏の脂肪を燃焼するために必要な消費カロリーは、約7200kcalとされています。脂肪は密度が低いため、1kgあたりの体積は500mlのペットボトル2本分以上になります。脂肪を3kg落とすことができれば、数字以上に見た目へのインパクトが感じられることでしょう。脂肪3kgを落とすまでに要する時間を、ジョギングとバレエダンスで簡単に比較してみると以下のようになります。
〇30分のジョギングを週に2回続ける場合…【成果が出るまでに15ヶ月】
7200×3(消費すべきカロリー)÷367(ジョギングの1時間あたり消費カロリー)
=58.8(3kgの脂肪が落ちるまでの時間数)
30分のジョギングを週に2回、つまり毎週1時間のジョギングをする場合は58.8週=14.7ヶ月の時間を要することになります。
〇90分のダンスレッスンを週に1回続ける場合…【成果が出るまでに14ヶ月】
7200×3(消費すべきカロリー)÷262(バレエダンスの1時間あたり消費カロリー)
=82.4(3kgの脂肪が落ちるまでの時間数)
バレエダンスのレッスンは1回90分のクラスが多いようなので、週に1回通うとして
82.4÷1.5=54.9週=13.7ヶ月で目標が達成できることになります。
もちろん厳密には食事で摂取するカロリーや基礎代謝も考慮する必要があり、現実は完全にこの通りではありませんが、みなさんはどちらの方が取り組みやすく感じたでしょうか。
昨今、ダンスはyoutubeで様々な種類のレッスン動画を見ることもできるため、取り組みやすさや続けやすさ、継続して取り組む中での消費カロリーの総量で考えれば、ダイエット効果が十分期待できる運動の一つの選択肢であると言えそうです。
■出典:改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』国立健康・栄養研究所
https://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf
■文章中の消費カロリーは体重50kgの人を想定し算出しています。